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Ising モデル

Ising モデルは、強磁性体の性質を表す、最もシンプルなモデル である。 スピン自由度は各格子点(サイト)上にあり、$S_i = \pm 1$の値を取る。 スピン間の相互作用は、隣り合う格子点(最近接格子点)間のみで働き、 結合定数$J$で表される。 また、外場$H$が掛かっているものとする。 ハミルトニアンは、

\begin{displaymath}
H[H,J] = - \sum_{<i,j>} J S_i \cdot S_j - H \sum_i S_i .
\end{displaymath} (9)

ここで$<i,j>$ は最近接格子点のペアを表している。

次の章では、1次元の場合に実際にIsing モデルの分配関数を求める。 Ising モデルは、磁性体をモデル化したものとしては、 最も簡単な形をしている。 しかしながら、それでも解析的に解くことができるのは、 1次元の場合と、2次元で外場が無い場合だけであり、 2次元で外場のある場合、3次元以上の場合などは解くことが できない。 強磁性体の性質を定性的に明らかにする手法として、 3章で扱う平均場理論がある。 しかしながら、平均場理論では、後に述べる臨界指数などを正しく求める ことができない。 これは、揺らぎの効果を正しく取り入れていないことによる。 より一般的に相転移現象を調べる手法として、 Monte Carlo 法による数値シミュレーション の方法を紹介するのが、このノートの目的である。



Hideo Matsufuru 2006-06-16