今、系が有限個の状態からなる場合を考える。
系の発展を表すために、時間 を導入する。
物理的な時間と一致する必要はなく、シミュレーションの過程を
記述するために手で入れたものと考えてよい。
系が時刻 において状態 にある確率を、
とすると、確率の保存より、
(57) |
行列形式では、Eq. (58)は次のように表される。
(59) |
(62) |
(63) |
(64) |
の極限を考える。
このとき、確率分布がある一定の分布、
に収束するようなMarkov過程を、定常Markov過程と呼ぶ。
の固有値に対して、次のようなことが成り立つ[3]。 の固有値 () について、 が成り立つ。 また、 が常に確率行列 の固有値であることも 示すことができる。 このことと、Eq. (65)から、 が、の固有値1の(右)固有ベクトルであることがわかる。 もしもこの固有値1に対応する状態が非縮退ならば、定常分布 がユニークに存在することになり、定常Markov過程が実現される。
ある値よりも大きなステップ数について、のすべての 成分が正の値を持つとき、既出の Perron-Frobenius の定理によって、 の最大固有値は非縮退であり、その他の固有値は となることが証明できる。 この条件は、有限のステップ数で、任意の状態から任意の状態への 遷移が可能であることを意味する。 この性質を「エルゴード性」と呼ぶ。