重点サンプリングを実行するには、 Boltzmann ウェイトに等しい確率分布で場の配位を作る必要が あるが、これをいきなり与えることは一般に出来ない。 従って、まず系に対してある初期状態を用意し、 そこから系に対してある操作を加えながら、 出現確率が Boltzmann ウェイトに等しいような状態のシリーズを 作ってゆくアルゴリズムが必要となる。
このような過程のうち、Markov 過程と呼ばれる過程が重要である。 これは、次に生成される状態が、現在の状態のみに 依存するような過程である。 この場合、系の状態を何ステップも前に遡って保存する必要はない。 Markov 過程によって、初期状態から十分離れ、 生成される状態が Boltzmannウェイトに従うように、 即ち平衡状態に到達すれば、important sampling によって、統計力学的諸量を計算できる。
このような過程を構成するには、下で見てゆくように、 系の状態を遷移させてゆくアルゴリズムが「エルゴード性」 および「詳細釣合条件」とよばれる性質を満たす必要がある。