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初めに、最も簡単なビン・サイズ1のジャックナイフ法を説明する。
まず、番目のデータを除いた統計平均を定義する。
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の関数である物理量をとすると、の平均値とその誤差は、
次のように計算される。
これらの定義を、に適用すれば、
Eqs. (78), (79) になることが
容易に確認できる。
同様にして、ビン・サイズ m のジャックナイフ法は次のような
手順となる。
まず全データを、 個のビンに分割する。
それぞれのビンには、個のデータがあることになる。
各ビンにラベル ()を割り当て、このビンの
要素の集合を で表す。
ビン のデータを取り除いた平均値を、
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これを用いて、の平均値と誤差は、次のようになる。
ジャックナイフ法の特長は次の通りである。
- 任意の物理量 に対して誤差が計算できる。
- 磁化率や比熱のような、分散に関係した物理量の誤差を
求めることができる。
- 物理量の間の相関を取り入れた誤差評価になっている。
例えば、相関距離を
によってラフに評価する
場合を考える。
この時、 と は強く相関しているため、誤差の伝播則では
正しく評価できない。
ジャックナイフ法によると、この相関まで含めた誤差の評価になっている。
- ビン・サイズを大きくして行くことによって、測定を行った
配位の間の相関(自己相関、autocorrelaton)を評価できる。
これは、相関が無い場合には、ジャックナイフ法で評価した誤差は
ビン・サイズに寄らないため、誤差のビン・サイズに対する依存性
をみることによって、相関がどれくらいのステップ数残っているかを
見積もることが出来るということである。
一方で、ジャックナイフ法では、通常の誤差評価
Eqs. (78), (79) と同じく、
誤差は平均値に対してプラスマイナスに対称な評価である。
平均値に対し誤差が十分小さくない場合、プラス方向の誤差と
マイナス方向の誤差は一般に異なるが、このような場合は
ジャックナイフ法では正しく評価できない。
そのような場合には、ブートストラップ法などの、
より複雑な評価を行う必要がある。
Hideo Matsufuru
2006-06-16