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ジャックナイフ法

初めに、最も簡単なビン・サイズ1のジャックナイフ法を説明する。 まず、$k$番目のデータを除いた統計平均を定義する。

\begin{displaymath}
\langle A \rangle_k \equiv \frac{1}{M-1}\sum_{l\neq k} A_l
\end{displaymath} (81)

$A$の関数である物理量を$f(A)$とすると、$f$の平均値とその誤差は、 次のように計算される。
$\displaystyle \langle f(A) \rangle$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{1}{M} \sum_k^M f(\langle A\rangle_k)$ (82)
$\displaystyle \delta \langle f(A) \rangle$ $\textstyle =$ $\displaystyle \sqrt{ (M-1)\{ \langle f(A)^2 \rangle
- \langle f(A) \rangle^2 }$ (83)

これらの定義を、$A$に適用すれば、 Eqs. (78), (79) になることが 容易に確認できる。

同様にして、ビン・サイズ m のジャックナイフ法は次のような 手順となる。 まず全データを、$M_m=M/m$ 個のビンに分割する。 それぞれのビンには、$m$個のデータがあることになる。 各ビンにラベル$b$ ($b=1,...,M_m$)を割り当て、このビンの 要素の集合を $B_b$ で表す。 ビン $b$のデータを取り除いた平均値を、

\begin{displaymath}
\langle A \rangle_b \equiv \frac{1}{M-m}\sum_{l\not{\in} B_b} A_l
\end{displaymath} (84)

これを用いて、$f(A)$の平均値と誤差は、次のようになる。
$\displaystyle \langle f(A) \rangle$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{1}{M_m} \sum_{b=1}^{M_m} f(\langle A\rangle_b)$ (85)
$\displaystyle \delta \langle f(A) \rangle$ $\textstyle =$ $\displaystyle \sqrt{ (M_m-1)\{ \langle f(A)^2 \rangle
- \langle f(A) \rangle^2 \} }$ (86)

ジャックナイフ法の特長は次の通りである。

一方で、ジャックナイフ法では、通常の誤差評価 Eqs. (78), (79) と同じく、 誤差は平均値に対してプラスマイナスに対称な評価である。 平均値に対し誤差が十分小さくない場合、プラス方向の誤差と マイナス方向の誤差は一般に異なるが、このような場合は ジャックナイフ法では正しく評価できない。 そのような場合には、ブートストラップ法などの、 より複雑な評価を行う必要がある。



Hideo Matsufuru 2006-06-16