平均場近似による解析は、Ising モデルでスピン間の協力現象 によって自発磁化が生じる機構を自然な形で説明できた。 しかしながら、平均場近似では、スピンに作用する相互作用 を、文字通り「平均場」として扱うために、スピン間の相関に よる揺らぎの効果が取り入れられていない。 このため、このような効果が重要となる、相転移近傍での 物理量の振舞いを正しく記述できない。 このことは、臨界指数を見ることによって明確になる。
Table 1は、Isingモデルと
同じユニバーサリティ・クラスに属する系の臨界指数である
[1]。
平均場近似の結果は、これまでに説明した解析法から、
熱力学関数を相転移点の近くでについて
展開することによって得られる。
相関関数に関する臨界指数については、これらの平均場理論の
本質的な効果を取り出し、秩序変数を自由度とする Hamitonian
で系を記述する、Landau 理論の解析によって得られる。
これらの平均場理論による臨界指数は、次元に依らない。
Table 1で
`Experiment'の列は、Ising モデルと同じユニバーサリティ
・クラスに属する3次元の流体系の実験から得られた数字で、
実験誤差が示されている。
と
は他の臨界指数との関係から得られた数字である。
最後の2つの列は、Ising ユニバーサリティ・クラスの臨界指数の
理論的な数値である。
2次元での数値は Onsager (1944) による解析解からのものであり
[2]、3次元での数値は繰り込み群の方法を使った
解析の結果である[5]。
これらを見ると、平均場理論による臨界指数は、 実験やより正確な理論的計算の結果を定性的には再現しているが、 定量的なレベルでは明らかな違いがある。 これは既に述べたように、臨界現象で重要な役割を果たす揺らぎの 効果が含まれていないためである。 これを正しく取り入れた計算法は、Wilsonらによって開発された 繰り込み群の理論によって与えられた。